人文社会系国際公共政策学域のZhengfei Yu准教授が、すべての科学学術誌におけるランキングで12位に位置するEconometrica誌に論文を出版いたしました。
Econometrica誌は、分野間比較を可能にした、SJRindexで、Nature, Science, Cellなどを含む全科学分野の学術雑誌で、ランキング12位に属する評価が極めて高い経済学にフォーカスした学術誌です(https://www.scimagojr.com/journalrank.php)。
本研究は、医療や教育、労働などの社会政策の効果をより正確に評価するため、ベイズ統計の枠組みを用いた新しい因果推論手法を開発したものです。従来の頻度主義的手法では、得られた推定値の解釈が難しく、意思決定者にとって直感的でない場合がありました。これに対してベイズ手法は、処置効果の分布(事後分布)を直接得ることができ、政策の便益とコストを分布として比較できるという利点があります。本研究では特に、平均処置効果(ATE)を推定する際に重要とされる「二重ロバスト性」という理論的性質をベイズ手法でも満たすようにし、従来存在しなかった理論的保証(バーンシュタイン-フォン・ミーゼス定理)を世界で初めて確立しました。さらに、ガウス過程回帰などの機械学習手法を活用し、実用面でも高い性能を示す手法を提案しています。これにより、ベイズと頻度主義の架け橋となる理論が確立され、学術研究だけでなく、政策立案現場でも活用できる新しい枠組みを提供しています。
論文は、以下で閲覧可能です。
https://doi.org/10.3982/ECTA21442